






「使ってみないとわからないことがある」―イストクの家具をデザインする山田佳一朗さんが神奈川県川崎市に開いた「街ノ停留所」は、イストクの家具の体感型のショールームも兼ねています。
2024年10月にオープンしたこの場所は、家業の花苗店「花ノ停留所」のリニューアルと同時に飲食店、コーヒースタンド、パン屋、菓子工房などが複合する空間として生まれました。
2011年のイストク発足時からデザインディレクターを務める山田さんは、1997年に武蔵野美術大学を卒業後、同研究室助手を経て2004年よりKAICHI DESIGNを主宰。「考える人、作る人、伝える人、使う人と共に考え、関わる人が生き活きと生活する」ことを目指し活動するデザイナーです。
自ら使い、自信を持って薦める
「街ノ停留所」の大きな特徴は、カフェスペースに展示されたイストクの家具が実際に使用できることです。展示された家具を見て触れるだけでなく、食事をしながら本当の「使い心地」が体験可能です。また、同施設にある山田さんの事務所「KAICHI DESIGN」でもご自身がHARPデスクやチェアを日常的に使用し、その使い心地や経年変化を体感しています。
「自分で使えるものだからこそ、他の人にも自信を持ってオススメできる」という山田さんの言葉には、デザイナーとしての誠実さが表れています。家具の販売方法や体験の場の創出という点で、デザイナー自身が運営し、実際に使いながら改良点を見つけていくというサイクルは、製品開発にも大きく貢献しているようです。
ほとんどのシリーズと樹種を網羅
飲食スペースでは、イストクのJacketを除く全てのシリーズはもちろん、全ての樹種を揃えています。入口の明るいスペースのホワイトアッシュから中間にオーク、奥の落ち着いたスペースへウォールナットとグラデーションを描く工夫もあり、家具店とは一線を画したデザイナーならではの視点が光ります。バリエーションをサイズ違いで展示したり、座り心地を比較できるようにしたりと、実際の生活をイメージしやすい工夫がなされています。
また、イストクの家具に加え、山田さんのデザインによるblocco(ブロッコ)のソファや食器や雑貨も展示販売しています。
花を買いに来たり、ランチを食べに来たついでに家具を知って気に入ったので購入したなど、従来の家具販売では想定していなかったきっかけで、イストクの家具と出会う人も増えているといいます。
地域の交流拠点として
「街ノ停留所」は花棟と菓子棟の2棟から構成されています。自身の店「花ノ停留所」のほか、マッサージ店、パン屋、コーヒースタンド、日替わりカフェ、レンタル菓子工房が入居しており、多彩な魅力が詰まった複合施設となっています。
日替わりでシェフが異なる「花ノキッチン」も特徴の一つです。毎週水曜は薬膳&フレンチの「Bistoro 月虹」、木曜は季節の素材にスパイスやハーブの風味を加えた「koyori」。金曜は「cafe83」が地元産の野菜や果物を用いたカレーやパスタを、「kaula」は不定期でお酒と料理を提供しています。
従来の家具店やカフェとは一線を画す「街ノ停留所」は、家具店に足を運ばない人でも気軽に立ち寄れる雰囲気を大切にしています。山田さんが以前から取り組んできた地元のお祭りの継承やマルシェなどが源流となり、「街ノ停留所」は地域の人々の交流拠点として、町の人が求めていた場所へと自然に進化しているようです。
特筆すべきは、お店を持ちたいという「起業予備軍」が集まる場としての役割。主婦の方やセカンドキャリアを探している人たちが、出発へのステップとして空間の一部を借り、自分の可能性を試す場になっています。花屋に訪れる人との交流や、マルシェに出店したい人たちの集いの場としても活用され、多様なコミュニティが形成されています。
暮らしを豊かにする体験と交流の場所へ
「街ノ停留所」は、家具デザイナーが自ら創り出した体験の場。その空間で過ごすことで、イストクの家具の魅力をより深く感じることができます。家具に興味がある方はもちろん、新しい交流の場を求める方にも訪れていただきたい場所です。
イストクの家具の魅力を伝えるだけでなく、地域に根ざした新しいコミュニティづくりの場としても、今後さらなる進化を楽しみにしています。






