ショールーム化する家具店への危機感
「メーカーが覚悟を持ってリリースしたモデルだけを置きたい」そう断言するのはエルムコート代表の鈴木さん。「ブランチを見たとき、商売抜きでこれは仕入れないといけない」と思ったと続けます。
木材業から始まり家具店へと業態を変えた家業を鈴木さんが引き継いだのが2008年。ショールーム化が進む従来の家具店の形態に危機感を覚え、ご自身の審美眼をベースに「ヨーロッパの地方都市にあるような長く愛される家具店」を目指し舵を切ったと言います。
現在、買い付けについては、展示会には行かず、独自性があり、美しいフォルムを携えた家具を自ら探して、メーカーに直接コンタクトをとるスタイル。そうして集まった商品が並ぶ店内は家具店というよりは、サロンというたたずまいです。
「細身の家具が好みというのはありますが、ブランチのシャープさには目をひかれました。」前述の通り展示会には行かない鈴木さんは、自店でも取り扱う心石工芸さんがイストクの工場見学にいらしたブログ記事にチラッと写っていたブランチに即応。
お電話をいただき、ご来社の後にお取り扱いいただくようになりました。
「家具メーカーとして目指す世界が見えました。売れ筋には近づかない独自性に親近感をいだいたことを覚えています。」とご評価いただきました。
イベント開催、雑誌企画など独自のPR戦略
同店は浜松近郊の専門店を集めたイベントを主催、雑誌を企画するなど家具に限定しない独自の活動に注目が集まり、名古屋や静岡からも目指して来るお店へと進化しています。2018年からはこだわりを持ったお客様にゆっくりと見ていただけるようにと、開店を13時と遅めに設定。午前中はお得意様のための時間として空けてあるとのこと。
このように目利きであるご自身と同じようなこだわりを持つ方に向けた店作りを進めてきた鈴木さんからは、「職人技とデザインのバランスをどのように保っていくのかを楽しみにしています」と厳しくも温かいエールをいただきました。
取材・文 横田茂(Afterhours)