丸徳家具店
丸徳家具店 小泉誠さんが設計した店舗に入ると、天高のある白い空間に約100脚の椅子が出迎えてくれた。
丸徳家具店 5代目の店主、佐藤ノリモトさんと奥様のさゆりさん
丸徳家具店
丸徳家具店

棚などの箱物を主とした日本最大の木工家具産地、福岡県大川市。
その一画で155年続く丸徳家具店は「椅子専門店」だ。

なぜ箱物の産地で椅子ばかりを扱うのか?
その謎を知るべく、イストクのデザイナー山田佳一朗が大川を訪れた。

2022年1月。
大川の大通りから一本入った古い街並みを抜けると、エンジ色の建物が現れた。
小泉誠さんが設計した店舗に入ると、天高のある白い空間に約100脚の椅子が出迎えてくれた。

一脚ずつ丁寧に置かれた椅子たちは、まるで自分に座ってくれるのを待っているようだ。
全部に座ってみたい!
衝動を抑えつつ、早速インタビュー。

「もともとは桐箪笥を売っていたんですよ。」
5代目の店主、佐藤ノリモトさんは言う。

「当時はネットもなく、情報がない時代ですから。一人で家具産地へ行き、自分の足で職人さんを訪ねて回ったんです。」とは店主の佐藤さん。
ご両親から30年前に箪笥店を継いだ佐藤さんは、当時主流だった婚礼箪笥からの脱却を目指し、日本中の産地を回って椅子を仕入れたそうだ。

椅子を選ぶ基準は何だろうか?
「私が使いたいもの。それから工場を見てどうやって作っているかと、オーナーの考え方の3つです。」
なんと!デザイナーと同じだった。
私も必ず工場を見てメーカーの代表と話し、作りや考え方を理解してからデザインを始める。

私は展示会で椅子を座り較べている佐藤さんを何年も見てきたが、こんなに丁寧に椅子を味わう人はいない。
ゆっくりとアームを撫で、座り心地を確かめる。
「椅子は裏返して見ますよ。イストクの椅子は裏まできれいですね。」

だから佐藤さんに椅子を選んで頂けると、嬉しい。
丸徳家具店には現在、「HARP」「GAZELLE」「BRANCH」「POODLE」と4つのシリーズをお取り扱いいただき、2月には新作の「VIOLA」が並ぶ予定だ。

イストクが選ばれた理由を聞いたら思いがけない答えが返ってきた。
「大事にしているのは電話の応対です。イストクは事務の方の応対が良く、気持ちよくやりとりしています。」
デザイナーが知り得ないイストクの一端を見た気がして、ホッとした。

もう一つ、丸徳家具店の椅子選びには特徴がある。
「ほとんど大川の椅子はないんです。全くないわけでないのですが、九州は箱物の産地ですから。」
大川は箱物の産地だから、椅子作りが得意なメーカーが少ない。
構造やディテールが納得できる椅子を突き詰めていくと、自然に他産地の椅子が増えていったそうだ。

結果として、丸徳家具店には日本で丁寧に作られた木の椅子が揃った。
「九州や山口からが多いですが、コロナ前は関西や東京、遠方だと宮城からも椅子を座りにくるお客様がいました。ハウステンボスや別府温泉と同じく一つの目的地として来てくれるのですね。」
確かに、そう言われると「椅子のテーマパーク」にいるような気がしてきた。

居心地の良い空間にゆったりとした空気。
気がつくと2時間半が経っていた。
「お客様とお話ししていても、あっという間に時間が経ってしまいます。そのせいか、椅子を選ぶのはお客様なのですが、生地は私たちに選んで欲しい、と言われることが多いんです。」
お客様との間に信頼が醸成されるのだろう。

丸徳家具店を訪れる時は、少し余裕を持って行くことをお勧めする。
タイムアップとなった私も次こそは100脚の椅子を味わいたいと思っている。

取材・文 山田佳一朗(KAICHI DESIGN)

Info

丸徳家具店
住所 福岡県大川市酒見118
電話番号 0944-87-5000

丸徳家具店
丸徳家具店 小泉誠さんが設計した店舗に入ると、天高のある白い空間に約100脚の椅子が出迎えてくれた。
丸徳家具店 5代目の店主、佐藤ノリモトさんと奥様のさゆりさん
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